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COPDの治療とは?

2025.08.02

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療は、大きく「非薬物療法(薬を使わない治療)」と「薬物療法(薬を使う治療)」に分かれます。ここでは、まず非薬物療法から説明し、その後に薬物療法について詳しく紹介していきます。

一番大切なのは「禁煙」

COPDの治療で最も重要なのは「禁煙」です。
わかってはいるけどなかなか難しい――そう思われる方も多いかもしれません。それもそのはず、タバコをやめられないのは「意志が弱い」からではなく、「ニコチン依存症」という病気だからです。
ニコチン依存症には、体がニコチンを欲しがる「身体的依存」と、習慣としての「心理的依存」の両方があります。ですので、自力での禁煙はとても難しいのです。

当院でも行っている禁煙外来では、禁煙補助薬などを使いながら、医師と一緒に禁煙に取り組むことができます。ひとりで悩まず、ぜひご相談ください。

加熱式・電子タバコや受動喫煙は?

「加熱式タバコや電子タバコは安全ですか?」
「受動喫煙もCOPDに関係ありますか?」
という質問をよくいただきますが、現時点で、加熱式・電子タバコが紙巻きタバコより安全というはっきりした証拠はありません。また、受動喫煙もCOPDの原因や悪化の要因となると報告されています。どちらも避けるに越したことはありません。

その他の非薬物療法

禁煙以外にも、以下のような治療が非薬物療法に含まれます。

  • ワクチン接種(感染予防)

  • 身体活動の維持・リハビリテーション

  • 栄養管理

COPDでは肺が傷んでおり、感染症にかかりやすくなっています。予防接種で感染を防ぐことが大切です。
また、咳や息切れのために動かなくなると、筋力が落ちてますます動けなくなるという「悪循環」に陥りがちです。そうならないよう、無理のない範囲で体を動かし、リハビリや栄養管理も並行して行うことが重要です。

特に大切なワクチン

ワクチンに関しては様々な意見がありますが、正確な情報をもとにご自身で判断していただくことが大切です。

その中でも、COPD患者さんには特に重要なワクチンが2つあります。

  • インフルエンザワクチン

  • 肺炎球菌ワクチン

これらを接種することで、COPDの悪化や入院・死亡率が大幅に減少したという確かな証拠(エビデンス)があります。すべてのCOPD患者さんに接種をおすすめしています。

最近では以下のワクチンも注目されています:

  • RSウイルスワクチン(アレックスビー®)

  • 新型コロナウイルスワクチン(コミナティ®)

効果が期待される一方で、歴史が浅く副作用や費用などもあるため、接種は個別の判断となります。気になる方はご相談ください。

薬物療法の中心は吸入薬

COPDの薬物治療では、喘息と同様に吸入薬が主役です。狭くなった気管支を広げて、呼吸をしやすくする目的で使われます。

主に使われる薬には以下の種類があります:

  • LAMA(長時間作用性抗コリン薬)
     例:スピリーバ®、エンクラッセ®、シーブリ®

  • LABA(長時間作用性β2刺激薬)
     例:オンブレス®、オーキシス®

  • LAMA/LABAの配合薬
     例:スピオルト®、アノーロ®、ウルティブロ®

これらは気管支の筋肉に働きかけて、気道を広げます。LAMAは優先的に使われることが多いですが、前立腺肥大症や閉塞隅角緑内障の方には注意が必要です。

吸入ステロイド(ICS)は補助的に

喘息では主役になるICS(吸入ステロイド)ですが、COPDではアレルギーではなくタバコのダメージが主な原因のため、ICS単独では基本的に使いません。

ただし、LAMA/LABAでも症状が改善しない場合は、以下の「3剤配合薬(ICS/LAMA/LABA)」を使用することがあります。

  • ビレーズトリ®

  • テリルジー®

  • エナジア®

吸入薬の種類は多く、それぞれ特徴があります。薬の選択や吸い方については、以前の喘息コラムも参考にしてください。吸入薬以外に、去痰薬や咳止め、抗生剤、漢方薬などが使われることもあります。

重症例には酸素療法(HOT)

進行したCOPDでは「在宅酸素療法(HOT)」が必要になる場合があります。

街中で、酸素ボンベを引きながら鼻にチューブをつけている方を見たことはありませんか?それがHOTです。重症COPDでは、安静時でも酸素不足になることがあり、酸素補充が生活の質や生命予後の改善に役立ちます。

酸素は「酸素濃縮器」と呼ばれる機械で作ります。これは空気から酸素だけを取り出して患者さんに届ける装置で、自宅に設置します。外出時は携帯用のボンベを使います。

COPDでHOTが必要となる方は多く、日本ではHOT導入患者の約45%がCOPDによるものです。
ただし、必要とわかっていても精神的なハードルが高く、受け入れるには時間がかかる方が多いのが現実です。

だからこそ、COPDにならないため、進行させないために禁煙が最も大切な一歩です。

まとめ

COPDの治療は禁煙をはじめとした非薬物療法と、吸入薬を中心とする薬物療法が基本です。重症例では酸素療法が必要になることもありますが、進行を防ぐためには早期からの対策が重要です。

当院では、吸入薬の処方や禁煙治療、酸素療法の導入も行っておりますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

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