咳が何週間も続くと「何か重大な病気では?」と心配になる方も多いと思います。
実際、長引く咳の原因はさまざまですが、診療の中でよく見られるのは次の3つです。
-
・喘息(ぜんそく)
-
・咳喘息(せきぜんそく)
-
・感冒後咳嗽(かんぼうごがいそう)
感冒後咳嗽とは?
これは「風邪をひいたあと、熱は下がったのに咳や痰が長く続く」状態を指します。
症状はダラダラ続きますが、再び急に悪化することは少ないのが特徴です。
ただし、以下のような変化があった場合は要注意です。
-
・熱がぶり返してきた
-
・痰の色が濃くなった
-
・息苦しさが出てきた
こうなると、風邪ではなく肺炎などの細菌感染症を起こしている可能性があります。
「風邪」の定義、知っていますか?
一般的に風邪とは、
「自然に治ることが多いウイルス感染症で、咳・鼻水・のどの痛みなど複数の症状が同時に出る」
状態をいいます。
症状の例は以下の通りです。
-
・咳
-
・鼻水・鼻づまり
-
・のどの痛み
-
・くしゃみ
-
・発熱
-
・だるさ
-
・関節痛
-
・声のかすれ など
つまり「多症状」が風邪の特徴です。
一方、細菌感染症は、基本的に体の特定の部位だけに症状が出ます。
例えば溶連菌による咽頭炎は「喉の強い痛み」「首のリンパ節の腫れ」「白い膿」が見られますが、鼻水やくしゃみは出ません。
この違いは、抗生物質が必要かどうかを判断する上でとても重要です。
ウイルスによる風邪に抗生物質は効きませんので、むやみに使わないことが大切です。
喘息とは?
正式には「気管支喘息」と呼びます。
気管支にアレルギー性の炎症が続き、気道が細くなり、少しの刺激でも咳や息苦しさが出る病気です。
症状の特徴は…
-
・ヒューヒュー・ゼーゼーといった呼吸音(喘鳴)
-
・咳、息苦しさ、胸の圧迫感
-
・夜間や早朝に悪化しやすい
-
・運動や寒い空気、アレルギー物質で誘発される
-
・風邪の時に悪化しやすい
- などです。
喘息になりやすい条件(リスク因子)
- 喘息の悪化につながる、いわゆる「リスク因子」も複数特定されています。
-
・アレルギー(ダニ、ペット、花粉など)
-
・アトピー体質、家族に喘息がある
-
・喫煙、大気汚染、冷えた空気
-
・過労やストレス
-
・運動、肥満、月経・妊娠
-
・風邪などの感染症
意外に「ストレス」や「女性のホルモン変化」も発症や悪化のきっかけになります。
喘息の診断は?
実は、喘息には明確な「診断基準」がありません。
日本アレルギー学会喘息ガイドラインによる「喘息診断の目安」によると
・発作性の呼吸困難、喘鳴、胸苦しさ、咳(夜間・早朝に出現しやすい)の反復
・可逆性の気流制限
・気道過敏性の亢進
・アトピー素因の存在
・気道炎症の存在
・他疾患の除外
などが診断の目安、とされています。
そのため、問診で症状のパターンやリスク因子を詳しく聞き取ることが最も大切です。
喘息の検査
喘息の検査は、(あくまで補助的な役割ですが)
-
・呼吸機能検査(スパイロメーター)
-
・胸部レントゲン(他の病気を除外)
-
・血液検査(アレルギーの有無を確認)
・呼気NO(一酸化窒素)検査
などがあります。特に「他の病気を見逃さない」ことが重要です。
長引く咳の原因は喘息だけではなく、まれに肺がんなど重い病気が隠れていることもあります。
まとめ
-
・長引く咳の代表的な原因は「喘息」「咳喘息」「感冒後咳嗽」
-
・風邪は多くの症状が同時に出るウイルス感染症
-
・細菌感染症は特定の部位だけに症状が出ることが多い
-
・喘息は気道が炎症で敏感になり、咳や息苦しさを繰り返す病気
-
・診断には検査よりも症状の確認が大事
次回は、喘息の治療についてお話します。