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喘息治療 ~知っておきたいこと~

2025.10.12

喘息は「季節のせい」「たまに咳が出る」くらいに思われがちですが、実は放っておくと生活の質が下がり、将来的に治療が難しくなることもある病気です。今回は、重症度の考え方から主な治療薬、そして毎日の吸入で大切なポイントについて解説します。

1. まずは「普段の症状」を見てみましょう

喘息は「今つらい発作」だけで判断するのが難しいことがあります。重要なのは普段の症状の頻度や、夜間の症状、検査での呼吸機能などです。ガイドラインではこれらをもとに「治療ステップ(1〜4)」を決め、必要な治療強度を選びます。ポイントは次の通りです。

・日中の症状が頻繁でないか
・夜間や明け方に症状が出ていないか(ここは特に重要)
・吸入薬で症状がどれだけ改善するか

特に「夜に週1回以上咳が出る」「夜間目が覚めることがある」場合は、中等症持続型以上にあたることが多く、早めにしっかりした治療が必要です。

2. 放置するとどうなるの?

喘息は気道の慢性的な「炎症」が根本にあります。この炎症を長期間放っておくと、気道がどんどん敏感になり、次第に狭く硬くなっていきます。初期は治療で元に戻りやすい(可逆性)ですが、長期間放置すると元に戻らない変化(リモデリング)が起き、治療の効果も出にくくなります。つまり「症状が軽いから放置でいい」は危険な考え方です。

3. 治療の主役は「吸入ステロイド」

喘息の長期管理で最も重要なのが「吸入ステロイド(ICS)」です。気道の炎症を直接抑える薬で、以下の効果があります。

・発作や症状の頻度を減らす
・QOL(生活の質)を改善する
・重症化や喘息死を減らす可能性がある
・気道リモデリングを抑える効果も期待される

副作用が心配な方も多いですが、吸入薬は基本的に気道に局所的に作用するため全身副作用は少なくなっています。うがいで口内を洗う、定期的に医師のフォローを受けるなどで安全に使えます。小児では長期使用で身長の伸びにごくわずかな影響が報告されていますが、やはり発作を防ぐメリットが大きいと考えられています。

4. 吸入薬の種類

現在の吸入薬は大きく次のグループに分けられます。治療は症状や重症度に応じて段階的に強くしていきます。

①ICS(吸入ステロイド)単剤:炎症を抑える基本薬。

②ICS/LABA(吸入ステロイド/気管支拡張薬の配合薬):ICSに長時間作用する気管支拡張薬(LABA)を合わせたもの。気道を広げる作用が加わるので効果を実感しやすい。

③ICS/LAMA/LABA(吸入ステロイド/気管支拡張薬/抗コリン薬のトリプル配合製剤):さらに長時間作用型抗コリン薬(LAMA)を加えた高作用薬。ICS/LABAで不十分な場合や重症例で用いることがあります。

注意点:LABA単独使用は喘息を悪化させるリスクがあり、必ずICSと併用します(配合薬として使うのが基本)。

5. 吸入薬の「吸い方」が効果を左右します

どれだけ良い薬を使っても、正しく吸えていなければ効果は半減します。主なポイントを具体的にお伝えします。

①デバイスの種類(使い方が異なる):

・DPI(ドライパウダー吸入タイプ):自分で速く吸い込む必要があるタイプ。目安は40〜80L/分(感覚的には「うどんをすする」くらいの速さ)。
・pMDI(噴霧タイプ):ゆっくり吸っても使えるが、息のタイミングが重要。

②具体的なコツ

・流速:DPIはしっかりと速めに吸い込む(うどんをすするイメージ)。pMDIはやや穏やかめ。
・舌の位置(ホー吸入):舌が吸入口の前にあると薬が舌に当たって気管に届きにくくなります。舌をやや前に出し「ホー」と言う時の位置で吸うと良いです(日本喘息学会の解説動画あり)。
・息止め:吸った後は4〜5秒ほど息を止めることで薬が肺に行き渡ります。
・うがい:吸入後はうがいをして口の中や喉の薬残留を洗い流すと、口腔カンジダなどの副作用を予防できます。

医師や看護師に実際のデバイスを見せてもらい、使い方を確認することをおすすめします。クリニックで吸入指導を受けられる場合は遠慮なく申し出てください。

6. アドヒアランスが鍵

治療効果を決めるのは薬の選択だけではありません。実は「アドヒアランス」、つまり患者さんが治療方針を理解し、自分ごととして治療に参加する姿勢が非常に重要です。医師と目標(「発作ゼロ」「夜間症状をなくす」など)を共有し、分からないことや不安を話して、同じゴールに向かって治療を続けることが最も効果的です。よく言われるのが「薬剤選択1割、アドヒアランス9割」という言葉。まずは続けること、分からないことを相談することが大切です。

7. 具体的な日常のアドバイス

・夜間に咳が出る、目が覚めることがある方は早めに受診を。
・喫煙は吸入薬の効果を弱めます。喘息のある方は禁煙が大切。
・季節の変化や風邪、強い匂いで悪化しやすい人は予防的な対策(マスク、室内の換気・掃除)を心がける。

定期的な受診で症状の変化や吸入方法のチェックを受けましょう。

まとめ(大切なポイントをもう一度)

・夜間症状は見逃さないで:中等症以上のサインかも。

・炎症を放置すると「リモデリング」で元に戻りにくくなる。

・吸入ステロイドが治療の主役。効果は大きく、副作用は管理可能。

・吸入のやり方(ホー吸入・流速・息止め)が効果を左右する。

・医師と治療目標を共有し、継続すること(アドヒアランス)が何より重要。

喘息は正しい治療と日常のケアでグッとコントロールしやすくなります。疑問があれば遠慮なく相談してくださいね。

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電話078-958-6821

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